下北・花巻紀行 (2)  大間崎、仏ヶ浦   イバイチの
旅のつれづれ


2.大間崎

 観光周遊バス「びゅうばす最北号」で仏ヶ浦に行く。薬研温泉入口の大畑から下風呂温泉を通り、大間崎で小休止し、佐井から船で仏ヶ浦往復するコースである。車中ではバスガイドが沿線の見所を説明してくれた。例えば戦前は下北―大畑間に大畑線と云う列車が走っており、更に大間まで開通させるために建設中に終戦になり未完で終わったが、その線路跡が今でも道路に沿ってあることや、大間から函館までフェリーが出ていて、1時間40分、2,200円(大人1人)で行けることなど知らなかった。

 青森に行くにはバス(100分、2,990円)で大湊まで出て大湊線で1時間58分、2,120円と4時間近くの時間がかかり運賃も倍以上である。町がフェリー会社に補助を出しているので大間町民はさらに割引になるということもあって、ここは函館市大間町なのだと話していた。因みに青森〜函館間のフェリーは3時間40分、2,700円である。

  大間崎に着く。むつ市内から約1時間半の距離である。マグロ一本釣りのモニュメントがある。大間のマグロは近海マグロのトップブランドとして築地に直送され、地元ではなかなか味わえないし目の玉が飛び出るほど高い。去年の春八戸で「大間のマグロまっしぐら」という弁当を1,200円で買ったら薄いマグロが3切れのっているだけだった。土産物の店にあるのもイカの干物、昆布などばかりである。

  また本州最北端の地の碑がそびえたっている。大間崎の沖合600mのところに弁天島という名の小島があり、弁財天が祭られ大間崎灯台がある。そしてその先の北海道函館の汐首岬までは17.5kmの距離で、晴れていれば恵山なども見えるというがあいにくガスが立ち込めて見ることは出来なかった。


 ここには石川啄木の歌3首を刻んだ歌碑がある。中央にあるのが啄木歌集「一握の砂」のトップに載っている「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」の歌である。啄木は盛岡中学在学の時に下北を旅したという話があり、その時に大間崎から眺めた弁天島の印象を後年この歌にしたのだということで平成10年に青森県啄木会が建立したものである。

 「一握の砂」の2番目の歌は歌集の題名にした「頬につたうなみだのごはず 一握の砂を示しし 人を忘れず」だが、3番目の歌は歌碑の向かって右側に刻まれた「大海にむかひて一人七八日(ななようか) 泣きなむとすと 家を出でにき」の歌である。左側の「大といふ字を百あまり 砂に書き 死ぬことをやめて帰り来れり」は10番目に載っている歌である。「東海の----」の歌が大間に旅をした時のものならば、同じ砂浜で詠んだであろうとの連想から刻まれたものなのだろうか。「一握の砂」の1番から10番までの歌は全て砂山の歌なのである。

 丁度手元に新潮文庫の「一握の砂・悲しき玩具」金田一京助編があったのでそれが判ったのである。金田一京助は啄木の4才上で盛岡中学の先輩だった。啄木の親友であり困窮した啄木に家財を売ってまで援助している。この文庫本の発行年は昭和27年だが買ったのは昭和28年の正月だと最後のページにメモ書きがしてあった。60年近く前の文庫本がよくぞ残っていたものだと感慨ひとしおである。青春の想い出の本である。

3.仏ヶ浦

 大間崎から佐井港に行く。ここから仏ヶ浦まで観光船が出ている。約20分で到着するという。船は殆んど満員で窓際の撮影に好適な席は取れず中央近くの席になった。海上から眺めると陸地は断崖絶壁が続いており、船でしか行けないのが良く分かる。仏ヶ浦に近づくにつれ白緑色の凝灰岩が多くなりやがて仏ヶ浦に到着する。

 仏ヶ浦は以前は仏の宇陀(アイヌ語で「浜」のこと)と呼ばれていたそうで、大町桂月が大正11年にこの地を訪れ「神の業 鬼の手創り仏宇陀 人の世為らぬ処なりけり」と詠んだことから世に知られるようになった。海岸にはこの歌を刻んだ歌碑が建っている。

 上陸してガイドの誘導に従って間近に聳える岩につけられた名前の由来を聞く。五百羅漢、如来の首、蓮華岩、蓬来山などその形状に従っていろんな名前がある。(写真は左から五百羅漢、如来の首、蓮華岩、蓬来山)

 40分ほど散策して再び遊覧船で佐井港に戻った。何かあまりに手軽過ぎて事前に想像していた 「なかなか行くことの出来ない秘境」 とのイメージとかけ離れて普通の観光地巡りに近い印象になったのは期待はずれだった。

 港の防波堤には「豊かな海」をテーマにした色とりどりの壁画が描かれ目を楽しませてくれる。港の前には津軽海峡文化館アルサスという建物がありそこの食堂で昼食を食べる。いくら丼や、うに丼などがあったが3,000円もして手が出ず、バスガイドが推奨した「青天(青森天然)ひらめづけ丼」1,200円を食べたがなかなか美味しかった。(写真は佐井港、アルサス、びゅうばす)

 帰りは内陸部に入り、川内川渓谷を通る。遊歩道があるが渓谷そのものは大したものではなく、大滝以外は観るべきものは無かった。


 降車地の下北駅には15時30分ごろ到着したが、もう少し時間をかけても尻屋崎に生息して居る野生の馬、寒立馬(かんだちめ)まで見たかったと残念に思った。

 (H23-6-28訪)

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