イバイチの奥の細道漫遊紀行

[松尾芭蕉この一句]

H23-5-25作成


 11月25日(平成21年)の朝日新聞「天声人語」欄に『松尾芭蕉この一句』という本の紹介があった。この本は芭蕉の約一千句とされる作品のどれが好きかを現役の俳人312人の投票によって順位を付け、その上位157作品が記載されているという。また同欄には正岡子規の芭蕉評として「過半悪句駄句を以て埋められ」と辛(から)かったが、その上で可なるもの200句余句あると認めたとも記されており、この本には子規が認めた可なる句は殆ど入っていると思われる。


 その中に「おくのほそ道」の句がどのくらい含まれているだろうと思い、早速購入することにした。この様な一般の書店ではあまり置いていそうもない本はアマゾンからネットで買うことにしている。インターネットで発注すると翌日か翌々日に届き、1,500円以上は送料も無料である。また少額だがギフト券が付き割引になる場合もある。

 芭蕉の紀行文は「おくのほそ道」の外に「野ざらし紀行」「鹿島詣」「笈の小文」「更科紀行」「嵯峨日記」があげられ、主要句集として芭蕉七部集「冬の日」「春の日」「阿羅野」「ひさご」「猿蓑」「炭俵」「続猿蓑」があり、それぞれに芭蕉の句が載っている。

良く知られた句として「古池や 蛙飛び込む 水の音」は春の日に、「野ざらしを 心に風の しむ身哉」「山路来て 何やらゆかし すみれ草」は野ざらし紀行に、「旅人と 我名よばれん 初しぐれ」は笈の小文に、「初時雨 猿も小蓑を 欲しげなり」「行く春を 近江の人と 惜しみける」は猿蓑に、「梅が香に のっと日の出る 山路かな」は炭俵にという具合で目白押しである。

そのなかで「おくのほそ道」の句を調べたところ36句入っていた。外に初案の句と曽良の俳諧書留にある句がそれぞれ1句づつあり、それを含めると157句中38句で24%と約四分の一の率になる。そして50位以内の句になると18句入っていて36%の高率に跳ね上がり、さらに20位以内では9句と約半数は「おくのほそ道」の句が占めていた。現代の俳人も「おくのほそ道」には名句が多いと認めているようである。

それでは10位以内は、またベストスリーはと知りたいところだが、この本のまえがきに「読み終わっても、まだ読んでいない人には、是非、結果を知らせないでおいてください。」とあるので、芭蕉が湯殿山で  「 惣じて、この山中の微細、行者の法式として他言することを禁ず。よって筆をとどめて記さず。 語られぬ 湯殿にぬらす 袂かな  」  と何事も書かなかったように、ここで留める事にしたい。因みにこの湯殿山での句は82位のランクである。
(平成21年12月22日記)

追記
 この本は平成21年11月25日に発行されている。それから1年半が過ぎた。ネットで調べると順位もだいぶ公開されているようなので、順不同で10位までの句を紹介したい。あなたならどのような順位にするだろうか?
なお奥の細道からは6句入っている。
(アイウエオ順)

 秋深き 隣は何を する人ぞ --------------- 芭蕉が亡くなる十数日前の句。
 荒海や 佐渡に横たう 天の河 ------------- 奥の細道、出雲崎での句
 石山の 石より白し 秋の風  --------------- 奥の細道、那谷寺での句
 海暮れて 鴨の声 ほのかに白し ----------- 野ざらし紀行の句
 この道や 行く人なしに 秋の暮 ------------ 秋深きと同じく芭蕉が亡くなる前月の句
 五月雨を 集めて早し 最上川 ------------- 奥の細道、最上川での句
 五月雨の 降り残してや 光堂 ------------- 奥の細道、平泉での句
 閑さや 岩にしみ入る 蝉の声 ------------- 奥の細道、山寺立石寺での句
 旅に病んで 夢は枯野を かけ廻(めぐ)る --- 芭蕉辞世の句
 夏草や 兵どもが 夢の跡------------------ 奥の細道、平泉での句

(平成23年5月25日記)

注1) 写真をクリックすると大きくなります
注2) 青字は「おくのほそ道」にある句です。
注3) 
緑字は「おくのほそ道」の文章です。