平成経済衰退の本質を読んで

2019年 7月 20日 (土)
今年(令和元年)615日(土)の朝日新聞書評欄に経済学者 金子勝 著の「平成経済衰退の本質』という本が載った。赤字国債の増加に関心を持っていたので、購入して読もうと思たが、品切れで重版中とのことで、10日ほど待って購入出来た。初版4月発行で、購入したのは第4版6月発行だった。

 本の帯には『平成時代が始まった1989年はバブルの頂点にあり、おごり高ぶっていた。 しかしその後に続く「失われた30年」は日本の産業競争力を決定的に落としてしまった。本書では「平成」時代を振りかえり、その「衰退の本質」に迫る。』とある。

 国債について言えばリーマンショック以降貿易黒字は従来の三分の一に減少しており、2018年の貿易赤字は1兆2000億の赤字に転落している。民間の貯蓄も伸び悩んでいる。リーマンショック後の外国人の投資家が持つ日本の国債は1割以上になっている。
 これが2割3割に増え、国債格付けが下げられれば、日本国債の投げ売りが起き、収拾のつかない財政危機に陥れられてしまう。1990年代初めはAAAだった格付けは、今はシングルAになっているがこれがBに移行していけばこうした財政危機は現実化していくと述べている。

 また一番の問題は平成の30年間に日本の産業競争力が決定的に落ちてしまった事である。自動車以外の情報通信、バイオ、エネルギー関連で日本の先端技術が殆んど無く、諸外国の後塵を拝している有様で、これではじり貧になるばかりである。
 殊に日本の基幹産業としてのエネルギーは原発に固執して新エネルギーの創出の足かせになり、電力会社や従来の重厚長大産業を優遇する政府の政策が時代に合わないためであり、いかにして新しい産業と社会システムを創り出していくかが課題であるという。

 

 読んでみて現在の様な格差の増大、人口減少、医療費の増大などの困難な問題に対し、どう対応して行くのかが政府に求められるところだが、今の政治情勢では、あまり期待できず、失われた30年が更に続き、日本の地位は落ちて行くばかりになりそうだ。

 ことに今の内閣になって失敗の責任を誰も取らず、官僚の人事権を過度に握って、官邸の動きを忖度し、時の政府に不具合なデータを改ざんするなどは、本来の「国家の将来のために何をすべきか」という官僚がなすべき本質を考える気概を失わせ、ますます将来に不安を生じさせるばかりである。

 「平成経済衰退の本質について」では最後に対応策も提言しているが、それを実行できる人物が政治家に限らず見当たらないのが日本の不幸で、その結果として国力の降下はまだまだ続きそうだ。




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(この項終り)

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